所得の再分配は結果としての機能であって、目的ではないと思う
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- 所得税には累進性があって、つまりたくさん稼いだ人からは比例以上にたくさん取る。一方で消費税は累進性がなくて、基本的にたくさん稼いだ人も少ししか稼がない人も同じ割合だけしか取らない。
- 消費税の税率を上げて所得税の税率を減らしたらどうかという議論が出ると、これは逆進性だからよくないという意見を言う人がたいてい一人はいる。逆進性というのは、累進度を弱める方向への改良のことだ(指摘している人にとっては改良ではなく改悪なんだろうけど)。しかもこういうことを言う人に限って、累進性というのはいいもので、これを高めることは世間の一般的にほめられることだと思っている節がある。
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- 僕の記憶では中学で、税金の機能として「所得の再分配」というのを習った。つまり累進課税によって、富める者からは多く取り、貧しい者からは少なく取ることが、結果として所得の再分配(=格差の縮小)に相当するということだった。純粋な資本主義を社会主義的にやや修正したものと捉えることもできる、みたいな事も言われた気がする。・・・そして今でもこの説明に間違いはないと思っている。
- 僕はここで強調しておきたい。「所得の再分配」は税金の目的の一つではない。機能の一つだ。言ってしまえば副作用だ。また社会主義的な修正を加えるためのものではない、そういう解釈も可能だというだけだ。
- 僕がそう言い切るのにはもちろん理由がある。もし、所得の再分配のために累進課税を導入したのであれば、もしくは(同じことだけど)社会主義的な修正を加えるために導入したのであれば、もっと堂々とやるべきだと思うのだ。つまり、累進課税枠によって昨年は○○兆円の税収がありました、これを人口で等分して一人当たり○○万円を再分配したいと思います、となるべきだと思うのだ。そして再分配用以外のすべての税金は、累進にする合理的な理由は全くないから、所得に単純に比例するか、もしくは人頭税的な方法で計算されればいいだろう。
- この方法でも現在の方法でも、結局差し引きは同じじゃないかというかもしれない。いやいやそれは違う。仮に病気入院中などで収入が全くない場合でも、再分配はうけられるのだ。もし再分配以外の税金が収入比例型であれば、確実に何らかの収入は得られることになる。人頭税的であれば、税金が高い場合は差し引きゼロだったり、もしくは不足するかもしれない。
- 僕のいう方法になっていないのは、結局累進課税が「所得の再分配」を目的にしていないからだ。では何のための累進性なのかといえば、要するに払えない人から税金を取ることはできないというだけのことだ。そしてその分を、高額所得者に回しているだけなのだ。累進課税というのは、単に税金の納税率を高くするための手段であって、再分配など目的にしていないのだ。再分配が目的なら収入のありなしや生活保護の審査結果などとは無関係に、累進性で集めた分を等分すればいいのだ。それこそ「再分配」と呼ぶにふさわしい。
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- それにもかかわらず、なぜか再分配を目的にしていると思い込み、またそれが国民一般に認められた大義だと思っている。
- 今政府がやっている累進課税制度は、単に払えるやつからはとことん搾り取るという暴力団まがいの方法でしかない。一方的に金額を決め、それを払わなければ脱税だ犯罪者だということにする(単に押し付けられた額を払わなかっただけで、他人の権利を侵害したわけでも、他人の財産を損なったわけでもないのに)。無銭飲食のように、過剰なサービスを受けておきながら払わないというわけですらない。
- そして生活保護を受ける人は、政府からお金をもらっているので政府に感謝する。本当は高額納税者のおかげなのに、政府はなんら生産的なことはしないでもらったお金を右から左へ移しているだけなのに、いやむしろその途中で自分たちの給料すらピンハネしているのに。税金を少ししか払わないで済んでいる人も、それが高額納税者のおかげだということを全く意識しないで、もっと払うべきなんだと連呼するだけ。政府は全くいいポジションだ。そしてその実態を隠すために、「所得の再分配」などという看板をかけてみせている。そしてそれにだまされた人がいつまでも絶えない。
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- 今は高額納税者はそれほどには流出していない。それは単に代わりになる候補地があまりないからだ。もし日本語が使えて治安・医療がいい地域をどこか最高税率の低い国の中に作ったら、たぶん一気に流出する(民間企業ならそれができる、たとえばセコムみたいな会社が海外でそういう地区を作って勝負に出るという可能性はある気がする。この場合セコムに毎月一定額の治安保険料を払い、もし被害を受ければ補償を受ける)。そうなればその人たちを客にするべく、企業もたくさんやってくるだろう。客層のおかげで利益率がいい上に税金も安いから、本社にするところだって出てくるかもしれない。
- 流出者があまり多くないことを、累進課税賛成派は「日本の魅力・日本の実力」だと勘違いしている節があり、だから流出を恐れずにどんどん累進度を高めようとか言っている。僕は時間の問題だと思っている。需要は明らかにある。国内に日本人村ができるのをよく思わない国はあるかもしれないけど、しかしそれが全部高額所得者で納税が期待できて、治安もいいとなれば(=コストも大してかからない)絶対に乗り気になる国が出てくると思う。まあ日本政府とはちょっとけんかになるかもしれないけど。
- そういう地域が出現してしまったら、もう政府に打つべき手は劇的な減税しかない。今ならそこまで減税しなくても、ゆっくり少しずつやっていきますので待っていてください、くらいのポーズでも十分かもしれないのに。一度出て行った人は、それより好条件を示さない限りかえってこないだろう。
- ちなみにそういう地区ができたときに引っ越すことは、日本政府が競争にさらされているということを思い知らせるためにはいい事なので、本当に日本のためを思うお金持ちは、あえて行くべきだと僕は思う。競争しなければ改善も進歩もない。日本政府は独占状態に長い間あぐらをかいてきたのだ。
こめんと欄