累進課税は悪い
- (by K, 2007.07.19)
- (内容的にはboyaki_a/00015の「政府が財政破綻するとどうなるの?」のところに少しつながりがある)
- (超忙しいのになんでこんなこと書いているんだろう僕は・・・。でも書かないでいるとどんどん忘れてバカになっていきそうで、そんな生き方はしたくないので、忙しくても書くことにした。)
(1)
- 僕が中学で所得税の仕組み(累進課税制度)を習ったとき、これはなんてすばらしい仕組みなのだろうと思った。政府がさまざまな行政サービスを実現するにはどうしてもお金が必要で、でも国民の中には貧しい人もいるから、貧しい人からはあまり取らないようにする、それだと足りなくなるからお金持ちの人にはたくさん払ってもらう、と。これが累進課税なんだと。
- 結論から言うと、僕のこの考え方はまったくなってなかった。これじゃあたぶんやがて政府は崩壊する(他国との競争に負ける)。深く反省したい。
(2)
- 累進課税がなぜよくないと思うか、それは簡単なことだ。お金持ちの人が損をする税制だから。つまり累進課税は「お金持ちの人いじめ」である。お金持ちの人は何も悪いことをしていないのに、国民だという理由だけで懲罰的というか、罰金的な税金を要求される。
- だって考えてみてほしい。所得10万円の人と所得100億円の人とで(所得の比10万倍)、その人が利用する行政サービスにかかるコストは10万倍も違うだろうか。戸籍を10万倍使うのか。救急車を10万倍呼ぶのか。お金持ちの家の子供に対して義務教育が10万倍も手厚くなるのか。
- まあ泥棒にあう可能性は10万倍かもしれない(泥棒はお金持ちの家を狙うだろうから)。
- むしろお金持ちは行政サービスに頼らない可能性のほうが高い。つまり公立ではなく私立の学校にわが子を進学させるとか、一般道ではなく有料道路を使う傾向が高いとか(有料道路は、少なくとも建前では、料金を取る分だけ税金使用率が少ないと思う)、そういうことである。またお金持ちは生活保護のお世話になる確率も低いだろう。だから、もし「自分が受けている行政サービスの対価として税金を払う」のであれば、所得に比例するような税制は不公平極まりない。まして比例以上にお金持ちをいじめる累進課税などはもってのほかである。
- 結局のところ、これは貧乏なら貧乏なほど得をする仕組みである。お金持ちならお金持ちなほど損をする、といってもいい。これじゃあお金持ちは日本にいたいとは思わないだろう。もちろん日本にこれを上回る魅力があれば出て行かないかもしれないけど、でもわざわざ日本を嫌いになるような制度を作る必要はないんじゃないかと僕は思う。
- こうして収入が多い人というか、お金を稼ぐ能力のある人たちは流出して行っているんだと思う。貧しい人はこの税制で得をするから出て行く気なんてまったくない。むしろ外国から入ってきたいくらいかもしれない(日本は移民を受け入れにくいから入ってこられないわけだけど)。そうなると日本はどんどんお金持ちが減っていく。所得が少ない人からはどうやっても税金を取れないわけだから、お金持ちへの課税はよりひどくなる。だからもっと流出する。これは明らかに悪循環である。
- ここの話はもっと単純化できる。つまり貧乏に手厚くすれば、そりゃ貧乏人にとって快適になり、その費用をお金持ちがわずかでも負担しているのなら、お金持ちにとって快適ではなくなる。快適だと思う人が集まってくるし、快適ではない人は去っていく。これは税金に限らないことである。もしお金持ちにこそ集まってもらいたいなら、むしろお金持ちに手厚くして、貧乏をいじめなくてはいけない(我ながらひどい結論だけど、でも結局はそういうことなんだと思う)。
(3) アイデア
- じゃあどうすればいいだろう。ということで僕はこんなことを考えてみた。まあごく大雑把な近似としては、国民一人当たりにかかる行政コストはその人の収入にあまり左右されない、としよう。そうであれば税制は基本的には人頭税ということになる。しかし人頭税をそのまま適用してもうまくいかないだろう。なんといっても払えない人はどうやっても払えないのだから。
- 仮に20歳以上の国民一人当たりの税金を年300万円としよう。まあ僕自身行政サービスの値段が300万円で妥当かと問われると「高すぎる!」と思えてならないのだけども、ここで300万くらいにしておかないと後の話が続かないのでとりあえずは勘弁してほしい。・・・もちろんこんな大金を20歳以上のすべての国民が支払えるわけではない。なんといっても4人家族でみんな成人していたら税額は1,200万円にもなる。これは非常に強烈だ。
- しかしそれでも払ってもらう。払えない人は、かなりの額を「生活保護」としてキャッシュバックしてもらうことで生活してもらう。これは結果的に税金の引き下げに相当するが、なぜ引き下げではなく生活保護なのかといえば、「税金が安くなったのではなく、かわいそうだから政府が助けてあげた」という事実を明確にするためである。税金を引き下げると、まるでそもそもそれだけの納税義務がなかったかのようにみえる。でもそれは間違った印象だと思う。行政サービスを享受している以上、収入に関係なく300万円を納めるべきなのだ。でもそれではあなたの生活が成り立たないから、しょうがないからたとえば270万円の生活保護を受けているのだ。これはできれば受けないほうがいいお金なのだ。
- 結局、金額的な話に限定すれば、これは所得税の累進課税はそのままで、最高税額が300万円に抑えられているということとなんら変わりはない。日本に成人が何人いるのか正確な数は知らないけど、人口1.2億人だから1億人くらいはいるだろう。そのうちの何割が全額の300万円を支払えるかもわからないが、まあ2000万人くらいはいるんじゃないだろうか(半額しか払えない人は0.5人、1割しか払えない人は0.1人と数える)。・・・ちょっと楽観的過ぎるかもしれないけど、まあ国外に流出した人が戻ってきてくれる分も含めていると思ってほしい。
- そうだとすればこれで政府の年収は300万円x2000万人=60兆円だ。法人税にも同じような仕組みを導入すれば(上限は300万円より引き上げるかもしれない)、海外から本社を日本に置きたがる企業がどっと押し寄せるかもしれない。これでさらに20兆円くらいは上乗せできるだろう。そうすると80兆円になる。・・・日本の国家予算の歳入が83兆くらいだったから、これでまかなえることになる。っていうか、このストーリーなら消費税も廃止できてしまう(もう足りてしまっているから)。相続税もいらない。
- この税制のいいところは、もし満額の300万円を納めるのであれば、確定申告みたいなことをしなくてもいいということである。だってそうだろう、確定申告なんて税金が正しく支払われているかどうかを確かめるためのものであって、満額出すのなら何の問題もない。だからもし満額を問題なく出せるようなお金持ちであれば、確定申告のために書類(電子書類かもしれないけど)を苦労して用意する必要はまったくない。そのぶん生活を楽しんだり労働してもらえばいい。うさんくさい経費を計上するために頭を使う必要もない。その分知的遊戯をしたり研究開発をすればいい。領収書だって激減する。その分会計にかかる時間は減って国民はよりいっそう生産的になるわけだ。国税局もかなり小さくできそうだ。どうせ今の国税局が苦労して調べているのはお金持ちが出した大量の書類を調べることなんだろう。そんな仕事はもうほとんどいらない。
- ここに挙げた数字はすごく適当なので、本当は300万円出せる人が2000万人相当いないかもしれない。その場合は上限を500万円に調節するとか、もしくは上限を150万円にして4000万人相当と見積もるとか、まあその辺は調節してほしい。
- 念のために書いておくが、もし国外からお金持ちが入ってこないと仮定した場合、この税制は僕たちのような低所得者や中所得者にとっては結果的に増税となるはずである(生活保護によるキャッシュバックを含めたとしても)。だって高所得者にとっては絶対に減税なのだし、消費税も相続税も要らないとかいう夢物語を言っているのだから、そりゃあそのツケが低所得者や中所得者に回っているのは間違いない。そうでないと計算が合わない(だからまあ、最初は消費税や相続税を存続させなければいけない範囲で始めるのがまだマシかもしれない)。
- しかし国税局の大幅なリストラや、国民全体の生産性の向上、さらには高所得者が今よりもお金を使ってくれるかもしれないという意味で、税金が下がったり、各個人の収入が増えるという効果はあるかもしれない。高額領域での税率が下がるので、中所得者の労働意欲が増すかもしれない。
- とにかく僕としてはたとえ自分たちの首を絞める結果になろうとも、何の罪もないお金持ちをいじめるということはやめるべきだと思うのである。良心がとがめる。不正をして楽に生きるくらいなら、苦労してもまっとうに生きたい。っていうかお金をもうける能力だって(僕にはほとんどないけど)、そう悪くはない能力だと思う(他人に迷惑をかけるような儲けかたはいけないけど。押し売りとか)。能力がある人ほど損をするのって何か間違っているような気がしてならない。さらに、今はそういういじめをしていてもどうにかなっているのかもしれないけど、これはそうは長くは続かないと思うのだ。
- でも僕は国外からお金持ちが入ってくることは期待していいと思っている。懸念すべき前科がなく、日本語か英語が話せて、毎年満額の税金を前払いしてくれさえすれば、原則として外国人の移住を認めてもいいんじゃないだろうか。税収upにつながるし、国内消費も伸びると思う。
(4) おまけ: 消費税も悪い
- 消費税も悪い税制だと僕は思う。もともと消費税への主な批判は、食料品などの生活必需品に課税するのは貧しい人につらくなるからだ、ということだったように思う。今流で言えば格差を広げる原因になるということだろう。でも僕はこの点は気にしてない。というか消費税はお金持ちも貧乏人も区別しないという点で累進課税的ではないので、むしろその点は僕の思想的には合致していると言ってもいい。
- 僕がけしからんと思うのは、流通の段階が増えれば増えるほど、何度も課税されるということだ。原材料Aを使ってBを作り、Bを加工してCを作り、Cを加工してDを作る、みたいなことをした場合、それぞれの加工業者が別々であれば、Aの値段が100円で、それぞれの加工業者が一切利益も経費も取らないとしても、Dにいたるまでで消費税が15.8%ほども乗せられることになる(消費税5%で計算:1.05^3=1.1576)。加工費用や経費は量産や企業努力で減らせるだろう、しかし消費税は減らせない。そうなると、ひとつの会社がすべて丸かかえでAからDを作るようにするほうがお得だということになる。極論すれば、鉱山からシリコン原石を掘り出して、パソコンとして出荷するべきだ、みたいな話である。
- これはひどい。何がひどいって、上流から下流までを合併した企業が誕生したら、もう新規参入が非常に困難になる。競争がおきにくい。各工程が中小企業でも手を出せるようにばらばらの企業になっていれば、競争もおきやすく、技術革新も進むというものだ。
- 消費税についてのここまでの議論は、正しくありませんでした。上記懸念は取り下げます。
- 計算もしんどい。売り上げがいくらなのかを国税局に報告して、それで納税しなきゃいけない。国税局はその売り上げが本当なのかどうかをチェックするという仕事ができてうれしいかもしれないが、僕はうれしくない。そんな非生産的な仕事なんかやめてしまえと思う。そんなことに1円だって税金を使ってほしくない、ムダ以外の何者でもないような気がする。
(9) 関連あるかもしれないリンク
こめんと欄
- 消費税のところが気になるのでコメントします。「流通の段階が増えれば増えるほど、何度も課税される」のところ、ソースがwikipediaで申し訳ないですが「消費税法」に「製造業者、卸売業者、小売業者と資産等が移転するにつれて、負担が次々に転嫁され、最終的には消費者が負担することになる。そのため課税の累積を排除するため、納税義務者はその売上げに係る消費税ではなく、差額に係る消費税を納税することになっている」とあります。本当に何度も課税されるのですか?また、いわゆる「学校で習った」ことで申し訳ないですが、いわゆる「所得の再分配」がそう悪いこととも思えません、べつに「いじめている」わけではないのではないでしょうか。ひとつ、気になったことをコメントとして加えておくと、Kさんの考えでは固定資産税は広義の累進課税に当たるのでしょうか、ということです。面白い意見だとは思いますが、消費税の件は、調べて書いていないとしたら、あまりにもお粗末ではないでしょうか。 -- くーみん 2007-07-23 (月) 17:52:32
- 消費税についてのご指摘ありがとうございます。その辺の事情は知らなかったので調べてみました。なるほど、仕入れ値と売り上げの差額に対して課税するということなので、僕の第一の懸念はあたらないようです。 -- K 2007-07-23 (月) 20:29:05
- 固定資産税については、累進課税かどうかは現段階では判断できません。ただし固定資産に課税するという根拠はほしいです。たとえば、固定資産の登記の管理費用を国民に負担してもらうため(受益者負担)という名目であり、それ相応の金額であれば納得できます。そうでなく、単に「固定資産をたくさん持っている人はお金持ちだろう、取れるところからはどれだけでもいいがかり的なルールを設定して、取れるだけ取ろう」みたいな話であれば、僕には「いじめ」に見えてしまいます。 -- K 2007-07-23 (月) 20:41:09