本当に今でも弱者は不当に搾取されているのか

  • (by K, 2008.08.21)

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  • ワーキングプアなる言葉が出てきて少し経つけど、社会は一般にこの言葉に対して同情的である。そしてその同情的な人たちの半分くらいは「こういう貧しい人から直接・間接的に搾取することで、お金持ちはお金持ちであることを維持している」ということを信じているらしい。そう思うからこそ累進課税も正しいと思っているようだ(中にはこれをより拡張して、誰かを不幸にしないと幸せな人はいなくなる、という信念を持つ人も少しいるらしい)。
  • 僕はこの思い込みには根拠がないと思う。そのことを書きたい。

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  • かつて奴隷制度があった。奴隷の人たちは明らかに少ない待遇でこき使われ、その利益は奴隷の持ち主のものになっていた。これは明らかに搾取である。・・・かつて小作人と大地主がいた。小作人は地主に対してかなりの賃料を取られていた。これは搾取かもしれないが、搾取ではないかもしれない。
  • 搾取かどうかというのは、少ない待遇でこき使われているかどうかだけで決まるわけではない。たとえば大きくて綺麗で品揃えが豊富でしかも割安な花屋さんがあったとしよう。その隣で、小さくて品も偏っていて割高で店員の対応が悪く、花に対する愛情すら感じられないようなひどい花屋があったとしよう。この悪い花屋は隣の花屋のせいで儲からないのは間違いない。もしいい花屋が後から来たのであれば、「あの花屋さえ来なければ」と思っているかもしれない。でも、この悪い花屋は今搾取されているといえるのか。むしろ今までそんなひどい殿様商売で客から搾取していたのに、それが出来なくなっただけなのではないか?
  • またこんなのもある。みんなが苦労して勉強しているときに遊びほうけて、学校を卒業する頃になって就職に必要な知識が無く、どこにも就職できなかったなんていう場合はどうだろう。それでやむなくつらくて苦しい日雇いの仕事で何とか食いつなぐなんていう場合、この人は搾取されているといえるのか。単に若いときの不始末をしっぺ返しされているだけではないのか?
  • 僕はこういうのは搾取されているというべきではない気がする。搾取されているというのは、実際は十分な能力があるのにもかかわらず、社会的な身分やその他理不尽な理由で労働内容に見合わない対価(同じ労働内容に対して異なる対価)しか得られない場合だけを言うと思うのだ。現在においては、一般にはそういう場合は転職するか独立すれば状況は緩和されるはずだ。
  • 給料が少ないなら給料の多い会社へ転職するべきだ。どこへ行っても給料が少ないなら、その業界は需要に対して労働希望者が多すぎる状態に陥っている可能性が高いので、違う業種へ移る勉強をして移ったほうがいい。

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  • 悪い花屋に話を戻そう。仮にこれが搾取だというのであれば、悪い花屋が働いているにもかかわらず少ない報酬しかえられていない分だけ、誰かが得しているはずである。そうでなければ搾取だなんていえない。・・・そう、この時点では、いい花屋が得していると思うかもしれない。
  • では申し訳ないが悪い花屋の店主が急死したとしよう。もしそれまで悪い花屋から搾取していたのであれば、この急死によっていい花屋の利益は減るはずである。・・・奴隷の場合で考えると分かりやすいかもしれない。奴隷が死んでしまったら、奴隷の持ち主は少ない対価で奴隷に仕事をさせられなくなるから、どう考えても損だ。地主と小作人でも同じだ。小作人が病死してしまって次の小作人を見つけることが出来なければ、何もしなくても小作人から上前をはねて暮らすということが出来なくなる。
  • さていい花屋はどうだろう。実は悪い花屋の店主の死によって損はしないのだ。むしろ、それまで悪い花屋に行っていたわずかな客までも自分のところに来るようになるのだから、死んだほうが得なくらいである。つまり、いい花屋は搾取していなかったのだ。いい花屋の繁栄は、悪い花屋の不幸の上に成り立っていたわけではなかったのだ。悪い花屋はいい花屋にいじめられていたわけではなく、単にがんばり不足で自滅していただけなのだ。

  • 今度は先の日雇い労働者のことを考えてみよう。もし日雇い労働者が死んでしまっていなくなったら雇い主は損をするだろうか。一人死んでしまった場合がどうかというとまた別の誰かを雇う結果に終わる気がするのでよく分からない。ということで、不謹慎な仮定であるが、何らかの理由により日雇い労働者だけがかなりたくさん死んでしまったか、もしくはいっせいに違う職種へ転職してしまったとしよう。
  • さてそうなると、雇い主は当然困る。だって安い賃金で仕事をやってくれる人がいないのだから。うーん、このままだと説明しにくいので、たとえばテレビの組立工場の場合で考えてみよう。そうすると、とにかくテレビを安く作れなくなる。ということで利益が減る。・・・ほーらやっぱり搾取していたじゃないかと言いたくなるかもしれないが、もう少し待ってほしい。
  • 実はテレビを安く作れなくなったのはこの工場だけじゃない。ライバル工場だって他から代わりの日雇い労働者を雇えないほどに人手が少なくて困っているのだ。これは給料を上げて求人するしかない。どこの工場もそうする。そうするとどの工場も経営が苦しくなる。赤字のところだって出てくるだろう。だからテレビの出荷価格を引き上げざるを得ない。これでは当然テレビを買う人が減るだろうから、下位の数社はつぶれるかもしれない。そして結局テレビの値段がある程度上がれば、結局給料引き上げによる損はかなり打ち消される。
  • ということで、日雇い労働者がいなくなってしまったことで損をしたのは、下位の数社とテレビを買う一般消費者だけである。つまり、搾取していたのは業績のいい数社ではない。世間は業績のいい会社は社会的弱者を酷使して肥えていると信じているかもしれないが、それは単にライバル社よりも安くていいものを作れるように努力した結果なのであって、労働者から搾取したからではないのだ。・・・もし単に搾取だけでコストを圧縮したのであれば、ライバル工場がその労働者をほんの少しだけ高い給料で全部引き抜いてしまえば、すぐに立場は逆転するのだ。でもライバル工場はそんなことはしない。なぜしないのかといえば、労働者を交換しても得しないからであり、それはその工場が搾取しているのではなく、単に業界全体でその労働者があふれていて、賃金が安くなってしまっているに過ぎないからなのだ。

  • さきほどテレビを買う一般消費者が実は搾取の犯人だったと指摘したわけだけど、実はこれは一般的に真である。いい花屋の場合、もし悪い花屋がいなくなれば、つまりもしライバルがいなくなれば、値上げしたり、店員の質を下げたりしても(=店員教育を手抜きしても)それなりに売れるようになるだろう。だから悪い花屋がつぶれればもっと儲かるようになるのだ。これに対して損をするのはもちろん花を買っていた一般消費者だ。つまり、悪い花屋から搾取していたのは一般消費者なのだ。悪い花屋が苦労していたおかげで、一般消費者はいい花屋から安くていいものを買うことが出来ていたのである。

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  • ということで、現代ではおそらく多くの人が思っているような搾取はほとんどない。
  • ちなみにすごいお金持ちは、極めて高級なものばかりを買っているのかもしれない。そうすると、それらの製品は日雇い労働者によって組み立てられたテレビやそれに類するものではなく、高い賃金をもらう職人によって作られたものがほとんどだろう。そうすると、すごいお金持ちは日雇い労働者のテレビ工場の製品の価格が上がっても損をしない。つまり、搾取していなかった人ということになる。搾取していた人が悪だというのなら、このすごいお金持ちは一般消費者よりもずっといい人だということになるのではないか。それなのに累進課税されて当然???・・・貧乏人によるただのヒガミにしか見えない。

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  • ちなみに悪い花屋についてだけど、いい花屋が来る前では、町唯一の花屋だったのかもしれない。その状況下では、町の人がとにかく花屋を望んでいて、その要望を満たしていたのだから、社会貢献していたといえるのであって、だから利益が上がっていたのは当然である。
  • しかしいい花屋が来てしまうと、状況は変わる。単に花屋であるだけでは町の人たちの要望を満たさなくなってしまった。いい花屋と同じか、もしくはそれ以上の花屋でなければ存在する意味が無いのだ。世の中に必要とされないものを無理して売ろうとしても売れるわけはなく、それで利益が上がらないのは当然だ。結局、社会が必要としているものを必要としているときに必要としている分以下だけ供給することが社会貢献なのであって、不要なものを不要なときに必要以上に供給してもただの迷惑というか、存在意義はない。そんなことで社会から利益が得られるべきではないのだ。だから利益が上がらなくて当然である。

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(6) 2008.08.24追記

  • 日本経済はかつて経済統計的には景気が悪くないのにデフレ、という時代があった。このとき経済的格差も広がった。100円ショップなるものもこの時代に生まれた。これはまさに、国内外にて低い賃金で人を働かせて、それで浮かせた分を値段に反映させた結果そのものではないだろうか。つまり企業が搾取していたわけではないのだ。・・・というかこういう説明がない限り、あれだけ長期にわたって好況下でデフレが続いた状況を説明できない気がする。

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Last-modified: 2008-08-22 (金) 00:17:14 (5060d)