評価額のワナ

  • (by K, 2008.10.22)

(1)

  • たとえば株式にしよう。自分が1000円の株を1000株もっているとき、この株券全体の価値は100万円だと誰しも思う。それはつまりこの株券を市場で売れば100万円で裁けると思っているからだ。
  • しかし株価なんていうものは、そんなことを全く保証できない。株価が1000円だというとき、それは最後に成立した取引が1000円だったというだけだ。つまり1000円以下なら買ってもいいという人と1000円以上でなら売ってもいいという人が「たまたまいて」、それで売買が成立したというだけのこと。明日も同じことが起こるという保証は全くない。
  • これよりマシな株価の表示方法として、気配値なるものもあるらしい。つまり、995円以下なら買ってもいいと意思表示している人がいて、1002円以上なら売ってもいいと意思表示している人もいる(これは意思表示をやめる前に対応する注文が来たら他の人よりも先に取引できるが、それを断ることはできない)。こういう気配値が出ていればいくらで売れるか明確だ。でも、これもその瞬間の気配値であって、明日までその値段で売れるという保証にはならない。それに気配値は、その値段で何株まで買い取ってくれるのか分からない。もしかしたら1株しか買ってくれないかもしれない。そうなれば、残りの999株はもっと安い値段で売らされる羽目になる。適当な値段での買い手が見つからない場合、とにかく現金化したい売りたいんだということになれば、買い手が出てきてくれるまでどこまでも値を下げて買い手を募集するしかない。これは売り気配値がどんどん下がることを意味する。もし900円まで買ってくれる人がいなければ、結局90.1万円でこの1000株を売ったことになる、直前の買い気配値が1000円だったにもかかわらず。
  • こんな気配値じゃ分からない、どの気配値にどのくらいの株数の注文があるかを見たいという場合は、そういう表があるらしい。これは「板」と呼ばれるそうだ。これを見ればその瞬間に無理に売ったときの値段が分かる。逆にとにかく1000株買うんだ、ってときにいくら必要かも分かる。
  • これは他のものでも同様に行われているようで、たとえば先物取引も全く同じ仕組みだ。たぶん為替も同じだ。100円02銭〜05銭とか言う場合、100.02円が売り気配値で、100.05円が買い気配値だ。
    • 僕は以前このことを知らないで、この範囲のどこかに本当の値があるけど、それが分からなくて範囲を示しているだけなんだと誤解していた。

(2)

  • こんな仕組みなので、売り気配値でいいから売りたい、という人が来るたびに売り買いは成立し、一番高い値段を希望している人からどんどん買っていく。そして売り気配値は下がる。買い気配値でも同じことが起きて、買い気配値で買いたいという人が来るたびに買い気配値は上がる。そうやって売り買いの気配値は開いていく。しかし一方で、その気配値の変化を見ながら、じゃあ私は○○円で××株の注文を入れておこう、という人も次々とやってくる。こうして気配値の隙間は新しい注文で埋められていく。
  • なぜこういう注文(指値注文)をする人がどんどん来てくれるのかというと、あせって気配値で売り買いするよりも有利に売り買いできるからだ。たとえば売り気配値が900円のときに時価で売るという選択をすれば一株当たり900円でしか売れないが、950円で指値注文して待っていれば、それが買い気配値になり、気配値で買いたいという人が来たときに950円で売り抜けることが出来るのだ。どうせなら高く売りたいじゃないか。買う場合も全く同様に、気配値で急いで買うよりも指値をして待っているほうが必ず安く買える。
  • 指値注文は必ずその値段で売買できるといういい方法だけど、じゃあ1000円で買った株を1100円に指値注文してほうっておけば必ず儲かるのかというとそれはそうとはいえない。もし他の人が1099円で常に指値注文していれば(成立してもすぐに新規の注文を入れる)、それが買い気配値となるので、あなたの注文は永遠に成立しない。これはお店で商品に高い値札を付けてほうっておいても、必ず売れるわけではないというのと同じだ。永久に売れ残ればただの不良在庫でしかない。でも売れれば確かに得だ。さっきの例みたいに、気配値では1000円が付いていたのに、いざ売ってみたら1000株で90.1万円にしかなりませんでした、ということはない。指値で1000円1000株なら、ちゃんと100万円で売れる。そのかわりその条件をのむ人が出てくるまでいつまでも待たされる。

(3)

  • さて僕が買い気配で買ったものをすぐに売るということをしてみたと仮定しよう。買ったものを返品したと思ってもいい。指値注文だといつ売れるか分からないので、気配値でやることにする。しかし当然ながら、買った値段では売れない。これはこういう気配値の仕組みなのでしょうがない。しかしそれにしたって、値段が大きく変わったらなんだか詐欺くさい気がしないだろうか。素人の目で見たら、100万円分の株を買ったのに、それを売ろうとして証券会社に電話したら、その株を今気配値で売ると95万円になりますが、それでもよろしいですか?なんていわれかねないのだ。なんかいきなり株を買っただけで損した感じがしないだろうか。それでも株を買いたいなんていう人がいるんだろうか。
  • これを避けるには、とにかく板に大量の指値注文が常に存在していないとダメだ。そして売り買いの気配値の差が1円になっているのが望ましい(気配値の差が0円になることは基本的には無い、なぜなら気配値の差が0円なら両者はお互いに満足して売り買いでき、取引が成立し、その分の注文が板から相殺して消えてしまうため)。1000円の株価に対して1円の価格差であれば、それは0.1%でしかないから、100万円分の株を買ってすぐに売っても99.9万円で売れる。100万円に対して1000円しか損しないならまあ許せるんじゃないだろうか。1000円くらいなら配当で余裕で取り戻せるだろう。
  • さて、それで板に大量の指値注文をしてくれる人がいる。それはデイトレーダだ。一日に何度も株を売ったり買ったりしてくれる。いわゆる短期売買でもうけようとする人たちだ。何度も売り買いをする以上、何度も指値注文を入れてくれる。彼らは基本的に感謝されるべき存在だと僕は思うのだが、なぜだか「会社に関心の無い粗悪な株主」「ギャンブラーみたいなもの」などといわれることがある。なんとひどいいわれようだろう。この人たちのおかげで株価は詐欺っぽい値段にならずに済んでいるのに。その状態を維持するために彼らは自分の財産をかけているんだ。その社会貢献度はかなりものだと僕は思う。それで儲けが出て何が悪いというんだ。もうけたらもうけたで税金まで払ってくれるのに、彼らをバカだ浮気者だと言ったクルクルパーな事務次官がいた(その後謝罪した)。経済のことを何も分かっていないんじゃないかと思う。
  • もし十分な指値注文量が常に存在していると仮定できるのなら、気配値の差は小さくていわゆる株価で近似しても問題なくなるし、個人の売り買い程度では気配値は動かない。つまり評価額が意味を持ってくる。

(4)

  • 現在世界中で株価が下がっているらしい。各国のデイトレーダたちは大丈夫だろうか。彼らが大きな損害をこうむってしまうと、彼らによる大量の指値注文はもうできない。そうなると、個人の注文程度でも気配値が動いてしまい、相場は乱高下する。評価額も当てにならない。ってことは有価証券の資産なんてほとんどあてにできないことになり、それでみんなあせって確かな現金に変えておきたいと思い、それがまた売り気配値の暴落を引き起こす。
  • 世界経済の安定を支えていたのは彼らだったのに・・・。
  • 僕は今こそデイトレーダが必要だと思う。だから、株ニュースの人とかが、今は長期的に見て買い時です、なんてことしか言わないのは大いに不満だ。この大荒れの時期だからこそ、短期的に売買して差額をがっぽりもうけるチャンスです、って言えばいいのに。すくなくともそういう稼ぎ方が存在して、その人たちは多大な社会貢献していることを言う機会があってもいいと僕は思う。

こめんと欄


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Last-modified: 2008-10-22 (水) 16:05:16 (4998d)