「Simple is best.」の真意
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- 「Simple is best.」日本語にすれば「単純が最善。」だろうか。しかしこの文の意味はあちこちで誤解されているような気がする。まあ誤解と言っても、僕がこの言葉を最初に言った人に真意を確認したわけじゃないから、実は僕のほうが誤解なのかもしれないけれど。
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- 僕が思うに、何事も単純であることが最善、単純であればあるほどいい、ということはないと思う。たとえば法律なんかは、単純化すればするほど何が義務で何が権利なのかあいまいになり、罰則もあいまいになる。あいまいな法律ほど有害なものはなく、本来やっていい事まで「やってはいけないのではないか」と誤認されて自由な活動が妨げられたり、司法の裁量で罪の程度が自由自在になり、軽微な犯罪で重罰が下ったりしかねない。
- 「Simple is best.」の真意は、余計なものはすべてそぎ落とすべきだ、ということなんだと思う。そぎ落とせるならそぎ落とせ。そうすれば、本来の機能の実現に必要なものだけが必然的に残る。その状態こそ最善なのだ。何でもかんでも削ればいいというものではないのだ。
- 人は改良と称して、すぐに何かを付け加えたがる。そして削ることには臆病だ。付け足せば現状よりも悪くなることはないと思っている。確かに最初のうちはそうだ。だから安易に付け足す。しかしそのせいで複雑さが増して他の部分との整合性に問題が生じてうまく動かなくなってくる。もしくは複雑さゆえにメンテナンスが難しくなる。複雑さゆえに使いこなせなくなる。「Simple is best.」はこの状況を打破して、削る勇気を与えるためにあるのだと僕は思う。でも何でも削ればいい訳じゃない。本来の目的のためには不要なものを削るのであって、必要なものを削ってはいけないのだ。
- それなのに、何が本来の目的なのかも定めないまま、単に機能を減らした言い訳として「Simple is best.」を持ち出す状況が散見される。単に削っていくことがいいのであれば、それは何もないことが最善になってしまうではないか。この格言はそんなくだらない状態を最善とするものではない。
こめんと欄
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