これでもサイエンス?-0003
- (by K, 2008.05.14)
- できるだけ数式を使わないで説明する科学(書いている本人は科学のつもり)
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- 僕は車のことはよく分からないんだけど、たとえばアクセルを1秒間最大に踏んだとすると、スピードは時速10kmくらい上がるんだろうか。停止状態から10秒踏み続けると、もう時速100km?・・・うーん、そんなに急加速はできないのかな。
- ただこれからする話では時速100kmくらいじゃ話が長すぎるので、たった1秒間踏むだけで、なんと時速1万kmくらい加速する乗り物を考えよう。もはや車じゃないのは自明に思えるので、夢の宇宙船だということにしようか。
- この宇宙船に乗って停止状態から出発して10秒間アクセルを踏めば、当然速度は時速10万kmになる。書くのが面倒なので時速10万kmを10万km/hと書くことにする。1分間踏み続けるなら60万km/h。60分間なら3600万km/h。24時間なら8.64億km/h。1週間なら60.48億km/h。・・・とこうなる、単純な掛け算なら。しかし実際はそうではない。というのは相対性理論ではいかなるものも光速である秒速30万kmを超えることはできず、そしてこれは時速に直すと10.8億km/hになるからである。
- 10.8億km/hを超えられないといっても、24時間までは順調に8.64億km/hになって、そしてそのまま30時間後についに10.8億km/hに達して、それ以降いくらアクセルを踏んでも速度は増えない・・・ということではない。そうじゃなくて、24時間の時点ですでに8.64億km/hにはなってない。それよりも結構少ない値でしかないだろう。正確に計算してないので分からないけど(ごめん)、24時間も踏んでいるのにまだ4億km/hくらいとか、そんな感じなのだ。そして1週間後でもまだ9億km/hくらいだったりするのだ。つまり10.8億km/hに「超えられない速度の壁」があるという感じではなくて、10.8億km/hに近づいてくると同じだけふかしてもあまり加速しなくなって、それでいつまでも10.8億km/hに近づいては行くんだけど到達できないのだ。
- なんでだろう。でも実験してこうなったというのなら、納得はいかないけどそういうものだと思うのしかないのかもしれない。・・・しかし話はそんなに単純ではない。
- たとえば僕がその宇宙船を運転しているとしよう。そして地球を発進してからずっとアクセルを踏み続け、1週間後に燃料がなくなってアクセルを放したとする。おっとこれじゃあ地球に帰れないじゃないか。ひどい話だが、まあいいか。どこか別の星で燃料を確保して帰ることにしよう。・・・で、それからしばらくしてABC星のそばを通って、それからちょうど1年後にDEF星のそばを通ったとしよう。うーん、僕は1年以上も減速も方向転換もしないまま飛んでいるのか。おい、生きているのか?なんか嫌な予感がするからそのことは考えないことにしよう。
- 仮に僕が相対性理論のことを全く理解してなかった場合、僕は自分の宇宙船が60.48億km/hになっていると思っている。当然だ。その速さのまま1年間進んだのだから、ABC星とDEF星は 60.48億km x 24 x 365 = 約53兆km離れていると考えるわけだ。・・・っぷ、バカだなあ、相対性理論を考えればどんなに速くても10.8億km/hまでしか行かないんだから、1年でも9.5兆kmまでしか進めないんだよ。・・・と思うわけなのだが、実はABC星とDEF星の距離は53兆kmなのである!つまり相対性理論なんて知らないほうが正解になってしまうのだ。
- ここで一応補足しておくが、この1年という時間を計ったのは当然パイロットである僕だ。だって主人公は僕なんだから。
- こんな補足をするのには理由があって、実は地上から僕の雄姿を天体望遠鏡で観察している友人からみると、僕の宇宙船は9億km/hで飛んでいるようにしか見えないし、だからABC星を通過してからDEF星を通過するまでは1年じゃなくて6年以上かかっているように見えるのだ。
- しかも話はこれで終わりじゃない。
こめんと欄